運賃値上げも“業界最安水準”を堅持 京王 車内テロ対策強化 「ライナー」終日運行も検討

京王電鉄は、新型コロナウイルス感染症の影響で利用者数が大きく減少した状況下でも、防犯・安全対策などの設備投資を積極的に進めていくため、13.3%の値上げとなる運賃改定を2023年10月に実施する予定です。

座席指定列車「京王ライナー」などで運行している京王5000系電車(ONECHANCE/写真AC)
座席指定列車「京王ライナー」などで運行している京王5000系電車(ONECHANCE/写真AC)

28年ぶりの値上げ運賃改定

消費税率変更によるものを除くと、同社の値上げは直近では約28年前の1995年(平成7年)にさかのぼり、その後の1997年(平成9年)には値下げも実施しています。さらに、2018年と2019年には、相模原線の一部に設定されていた加算運賃の引き下げを行っています。

初乗り運賃は現在、1円単位のICカードが126円、10円単位のきっぷが130円ですが、申請ではともに140円となり、10〜14円の値上げとなります。最遠の距離区分にある新宿駅〜高尾山口駅間では、IC運賃が388円から430円へと42円値上げされます。

通勤定期運賃は普通運賃の値上げ幅に合わせて改定され、割引率に変更はありません。家計の負担に配慮し、通学定期運賃はすべての区間で据え置きとなります。また、相模原線の一部区間に残っている加算運賃は、今回の改定に合わせてすべて廃止されます。

国土交通大臣宛ての変更認可申請は2023年3月24日(金)付で行われました。京王は、利用者の負担増に配慮して改定額を極力抑えることで、改定実施後も「業界最安水準の運賃」を維持できるとしています。

【図表で解説】京王 2023年10月の実施に向け運賃改定を申請

「一部座席指定列車」の導入も視野

コロナ禍の行動変容を受け、京王の輸送人員は関東大手民鉄の中でも最大の減少率となっており、特に定期運賃収入がコロナ前と比べて約3割減少しています。鉄道事業は2020年度から2期連続の営業赤字を計上しており、テレワークの定着などにより輸送需要は以前の水準に戻らないと想定されるなど、極めて厳しい事業環境にあるとしています。

これまで同社は、生産性を向上しながら従業員数を削減するなど経営合理化に取り組んできたとしています。コロナ禍においては緊急的に投資を抑制していましたが、直面している重要課題に対処するため、コロナ前を超える年平均331億円の規模で設備投資を加速化します。

2021年10月、京王線車内で傷害事件が発生したのを機に、リアルタイム伝送機能付きの防犯カメラが全駅・全車両に取り付けられます。車両の代替新造も併せて進められ、非貫通車両同士の連結を取り止めることで車内の避難通路確保が図られます。ハード面だけでなく、車内テロ対応訓練の継続実施、警戒警備の強化など、ソフト面でもさまざまなセキュリティ対策が実施されます。

そのほか、京王線笹塚駅〜仙川駅間の連続立体交差事業、ホームドアの全駅設置、ホームと車両床面の段差・隙間解消、踏切障害物検知装置の整備などの安全対策が進められます。激甚化する自然災害への対策として、構造物の耐震補強工事や法面の補強工事も引き続き行われます。

サービス面では、座席指定列車のさらなる拡充に向けて5000系車両が増備され、「京王ライナー」の増発や終日運行、一部座席指定列車の導入についての検討が進められます。チケットレスサービスの機能向上が図られるほか、2023年秋頃をめどに「鉄道乗車ポイントサービス」の導入が予定されています。新宿駅西南口地区の開発計画に合わせた新宿駅の大規模改良が進められるほか、リニア中央新幹線と接続する橋本駅の移設についても検討されます。

京王は、「『日本一安全でサービスの良い鉄道』を未来にわたり提供し続けていくため、不足する費用の一部についてお客様にご負担いただきたい」と、28年ぶりとなる値上げ運賃改定に理解を求めています。

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